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第24話 抵抗

「……雅文様……」  男が熱い吐息交じりに名前を囁き、黒崎の鎖骨の辺りを這っていた唇が少しずつ下へと降りて行く。  自暴自棄になってるとはいえ生理的嫌悪感だけはどうしようもできず、悔し涙が大きな目に滲んだ。  涙は目尻を伝い、シーツに吸い込まれて行く。  黒崎が泣いていることに気づいた男が、そっと目尻にキスをする。 「……泣かないでください……雅文様……」 その瞬間。ほとんど無抵抗でいた黒崎は激しく男の顔をはらった。  男の仕草や放った言葉は、沢井がよく黒崎に贈ってくれるものだったから。  快楽のあまり涙を流す黒崎の目尻に優しいキスをくれ、困ったように笑いながら、「泣くなよ……雅文……」と囁いてくれた沢井。  やっぱりやだ……和浩さん以外のやつに触れられるのはもう二度とごめんだ……!  黒崎は力なくベッドに沈み込ませていた両手を無我夢中で振り回して抵抗を試みる。  不意を突かれた男は一瞬引いたが、すぐに体勢を立て直し、黒崎の両腕を頭の上でひとまとめにし、自分がしているネクタイで拘束した。 「こんなこと……本当はしたくないのですが……」  男の口調は柔らかで優しいものだが、その目には確かに雄の欲望が浮かんでいた。  口の中にハンカチのようなものを突っ込まれ声を出すことができず、両手を拘束されているので、満足に抵抗もできない。  それでも体全体を使って黒崎は暴れた。  そのときだった。 「……さい! 困りますっ……」 「おい! 勝手に入って来る……ぐっ……!」  にわかに部屋の外が騒がしくなったかと思うと勢いよくドアが蹴り開けられた。

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