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第26話 恋人同士の再会

「和浩さん……どうして……?」  感動的な再会の場面にはしかし、ならない。  しゃがみ込んでいた男がダメージから復活し、立ち上がったからだ。  元々この男は父親のボディガード的な存在なのだと思う。  すぐに体勢を立て直すと、臨戦態勢に入った。  沢井も黒崎を自分の背中で守るようにしながら、挑むように男と向かい合う。 「和浩さん! だめだよっ! 逃げてっ! そいつ、和浩さんの右腕を傷つけて外科医としてやっていけなくしようって思ってる……!」 「……上等だね、できるものならやってもらおうか」 「和浩さんっ……だめっ」  悲痛な声を上げる黒崎に、沢井が首だけを振り向かせて、微笑んで見せる。 「雅文、いつも言ってるだろ。外科医は体力勝負な面があるって。あんまり俺のことみくびるなよ」 「でもっ……」  背は沢井の方が高いが、男の方ががっしりとしている。  和浩さんがケガでもしたら、俺は……。  黒崎は沢井をとめようと、その腕に縋りついた。 「やめてっ……お願いだから、和浩さん」  沢井は黒崎の頭を優しくポンポンすると、縋りついている手をゆっくりと剥がしていき、 「大丈夫、雅文……」  力強くうなずいて見せる。  そして沢井は再び男の方を見た。 「てめぇ、よくも俺の雅文に触りやがったな……許さない」  その声は黒崎に向けられていた優しく愛しげなものとは全く違い、殺意さえ帯びている。  斜め後ろから見える端整な顔立ちも激しい怒りのため冷たく凍てついてる。  しかし、沢井と対峙する男の方も負けてはいなかった。  口角だけを上げて笑いながら挑発する。 「……沢井さん、でしたか? そんな細い体で私に勝てますか?」  綺麗な筋肉がついているが、スリムな沢井。黒崎がこの屋敷にいた四日間で更にやせた……というかやつれたようだ。  屈強な男に敵うのだろうか。  気が気でなかった黒崎だったが、勝負は呆気なくついた。 「ごちゃごちゃうるせーんだよ!!」   沢井は男に言葉を投げつけると同時に、再び蹴りを食らわせた。  部屋の端っこにまで吹っ飛ぶ男。  そして、沢井は男の胸倉を掴み、右腕を振り上げ、力任せに殴ろうとした。 「和浩さん! 手はダメっ!!」

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