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第27話 愛する人のぬくもり
黒崎の必死の叫びに、沢井は男を離すと、みたび足で蹴り、靴で顔を踏みにじる。
屈強な男を相手に沢井は圧倒的な勝利をおさめた。
それでもまだ攻撃をやめない沢井に、黒崎が後ろから縋りつく。
「和浩さん……も、いい。やめて……そいつ、もうボロボロだよ?」
「俺はまだ許せねー……こいつ、おまえに触れやがった……!!」
「……和浩さん……、俺は大丈夫だから……」
「……雅文……」
「……もう二度と会えないと、思ってた……和浩さん……和浩さん……」
ポロポロと涙を零しながら呟くと、沢井が男を放り出し、黒崎を力強く抱きしめてくれる。
和浩さんの匂い……温もり……もう二度と感じられないと思ってた。
いったい、どうしてここが分かったんだろ……?
聞きたいことはたくさんあったが、今はまだ沢井の腕の中に抱かれていたかった。
けれども。
「何をしている!?」
抱きしめ合う恋人同士を引き裂くかのような声が部屋に轟いた。
「父さん……」
「あんたが雅文の父親か」
沢井が吐き捨てるように言葉を投げる。
「そうだ。おまえ、沢井とか言ったな。どうしてここが分かった?」
「外科医なんて仕事をしてたら、顔も広くなってね。知り合いになった有能な探偵に頼んで捜してもらった。……でも、どうせあんたの方も探偵のようなものを使って、俺たちのことを嗅ぎまわってたんだろ? だからフィフティーフィフティーだな」
「……いったい何しに来た? わざわざ右手をぐちゃぐちゃにされに来たのか?」
父親が馬鹿にしたように笑う。
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