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第31話 帰ろう……2
「どうして?」
「だって、俺と一緒にいると、和浩さんが酷い目に遭っちゃう。俺、あなたが傷つけられるのだけは耐えられな――」
黒崎の言葉は沢井のキスによって封じ込められた。
そしてそのまま愛する人の唇は耳元へと移動して囁きをくれる。
「雅文、俺の人生はおまえのものなんだぞ。おまえがいなければ、俺は誰のために、何のために、生きていけばいいんだ?」
「……和浩さん……」
沢井は、泣き出してしまった黒崎の目尻にそっとキスをする。
「泣くなよ……雅文」
……ついさっき別の男に同じようにキスをされ、囁かれたときは嫌悪感しかなかったのに、沢井のキスや囁きは黒崎をトロトロに蕩けさせてしまう。
ガクンと腰砕けになってしまった黒崎を沢井の力強い腕が支える。
「随分やせたな、雅文……、ちゃんと飯食って、眠ってたか?」
体のラインをそっと撫でながら沢井が心配そうに見つめる。
「ううん……喉、通らなかったし、ほとんど眠れなかった。……でもそういう和浩さんこそやせたよ? 大丈夫?」
「そうか? 俺はいざって時おまえを助けなきゃって思って無理やり食ってたんだけどな……ああ、でも俺も眠れはしなかったな……隣に雅文がいないから」
「和浩さん……ごめんなさい……」
「……さあ、家へ帰ろう」
「……ん……」
うなずくのと同時にふわりと体が浮いた。
沢井が黒崎を抱き上げたのだ。
まるで囚われの姫を救い出す王子のように。
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