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第32話 決着
「勝手なことは許さんぞ……!」
そこに入り込む無粋な声は父親のものだ。
「あれ? あんた、まだいたの?」
抑揚のない声で沢井が言葉を返す。
「いい気になってんじゃないぞ、この若造が……!」
「いちいちうるせーんだよ、そこ退けよ」
ドアを塞ぐ形になっている父親に沢井は鋭く吐き捨てる。
「警察を呼ぶぞ……!」
ズボンのポケットからスマホを取り出す父親。
「呼べば? あんたが雅文を拉致って、ここに監禁したことは犯罪だからな」
黒崎は沢井と父親のやり取りをハラハラする気持ちで聞いていた。
警察を呼ばれて不利なのは俺と和浩さんなのか、父さんなのか……。
沢井と父親の睨み合いが続く。
先に目を逸らしたのは父親の方だったが、捨て台詞を言うことも忘れない。
「雅文には絶対にうちの会社を継いで貰うからな」
「言ってろ」
沢井は肩で父親の体を押しのけると、部屋から出て行きかけて、ふと足をとめる。
「あんたがいなければ雅文はこの世に生まれていなかった。だからあんたがどれだけ最低な父親でも、そこだけは感謝してた。けど、今回あんたは雅文を酷い目に遭わせた……俺は一生許さないから」
静かな、でも強い怒りを孕んだ声で言うと、まだ何かを叫んでいる父親を無視して強引にその場をあとにした。
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