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第33話 決着2
沢井に抱きかかえられて部屋を出た黒崎は驚いた。
あちらこちらに父親のボディガードや部下たちが転がっている。
それを困惑した目で見ているメイドの女性たち。
その有様は屋敷の外――庭に出てもおんなじで、見張りの男たちが全て倒されていた。
「……和浩さんが、みんなやっつけちゃったの?」
黒崎が大きな目を更に真ん丸にして聞くと、沢井は得意げそうで、それでいてどこかバツが悪そうな表情になって答える。
「……まーね」
「こんなにたくさんの人たちを一人で?」
「……高校時代、喧嘩が趣味みたいなときがあったからね」
「……喧嘩、が、趣味……」
それはいったいどういう状態なんだろう?
黒崎がきょとんとしていると、沢井が額にチュッとキスをくれた。
「だからさ、雅文、俺はそんなに簡単にやられたりしないから。俺が大切なのは自分自身なんかより雅文、おまえなんだから」
「でも、和浩さん……」
「でも、はナシ」
「和浩さん……」
沢井は黒崎を抱いたまま広い庭を横切り、高い門の鍵を内側から開け堂々と出て行く。
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