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第34話 優しいキス

「和浩さん、入って来る時はどうしたの? この無駄に高い門」 「ああ……、乗り越えて入って来たよ。この門が一番てこずったかな」 「和浩さんっ……! そんな無茶して、もしどこか骨でも折ったらどうするんだよ……!」  黒崎が心配のあまり怒ると、沢井は困ったように笑った。 「まだ俺のことみくびってる。そんなにやわじゃないよ」 「でも、こんな無茶は二度としないで……和浩さんがケガでもしたら俺、どうしたらいいか……」 「でも、は、ナシって言ってるだろ。俺はおまえのためなら不死身にだってなってみせるよ」  沢井はそんなふうに言ってウインクなんかして見せるけど。  黒崎は唇を噛みしめてから言い張った。 「和浩さんには和浩さんのこと必要としてるたくさんの患者がいるんだよ? その人たちのためにもケガなんかしちゃダメなんだから、絶対」 「……確かに俺には必要としてくれる患者がいる。そういうことも含めて、雅文、俺の人生は丸ごとおまえのものなの」  そして、今度は、怒ってもイマイチ迫力のない大きな目にキスをくれた。

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