29 / 114

二人の距離⑥

 電車を降りて再び2人並んで歩く。  家が近くになるにつれ、暗い夜道も相まって寂しくなってくる。  叶芽に着いていくように歩く渚は周りを見渡し思う。  ここ、高級住宅街だ。  まさか本当にお坊っちゃま?  もしかしたら自分が奢ったのは逆に失礼だった?  なんて不安になる。 「ねぇ、カナちゃんの家ってどの辺?」 「えっと……もうすぐ。 だからここまででいいよ。 ナギも帰るの遅くなっちゃうし」 「別に遅く帰るのはよくあることだし、深夜でも問題無いんだけど」 「流石に深夜は問題だと思うけど……」  叶芽としてはまだ一緒にいたいが、家の前まで来て貰うのは申し訳無い。  それに親に見られてしまうと色々と詮索されて面倒だ。 「ナギ道分かる?」 「それは大丈夫。 カナちゃんこそ大丈夫? 襲われない?」  綺麗な顔した彼なら襲われかねないと、何かあったら大変であると渚は叶芽が心配だ。 「流石にそんな子供じゃないし大丈夫だから。 と言うか本当に家すぐ近くだし」 「そう? じゃあここで……」 「うん………」  また連絡するねとここで別れた。  渚は叶芽が帰って行くのを暫く見送ってから、踵を返し元来た道をまた戻っていく。  来た時とは違い、1人になったこの道は寂しい。  なので小走りに、早くワイワイと騒がしい家族の元へ帰ろうと思う。  一方叶芽はただいまーと高級住宅街の一角の豪邸に帰宅する。 「お帰り、遅かったな」  帰宅早々母、千歳が少し険しい表情でそうチクリと刺してくる。 「そうかな? 別に友達と食事してきただけだよ?」 「本当に?」  それ程遅くなったとは思わないが、今まで佑真以外とこんな風に何処かへ行くことがなかった為、突然今日友達と遊びに行くからと言ったのを怪しまれている。

ともだちにシェアしよう!