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二人の距離⑥
電車を降りて再び2人並んで歩く。
家が近くになるにつれ、暗い夜道も相まって寂しくなってくる。
叶芽に着いていくように歩く渚は周りを見渡し思う。
ここ、高級住宅街だ。
まさか本当にお坊っちゃま?
もしかしたら自分が奢ったのは逆に失礼だった?
なんて不安になる。
「ねぇ、カナちゃんの家ってどの辺?」
「えっと……もうすぐ。
だからここまででいいよ。
ナギも帰るの遅くなっちゃうし」
「別に遅く帰るのはよくあることだし、深夜でも問題無いんだけど」
「流石に深夜は問題だと思うけど……」
叶芽としてはまだ一緒にいたいが、家の前まで来て貰うのは申し訳無い。
それに親に見られてしまうと色々と詮索されて面倒だ。
「ナギ道分かる?」
「それは大丈夫。
カナちゃんこそ大丈夫?
襲われない?」
綺麗な顔した彼なら襲われかねないと、何かあったら大変であると渚は叶芽が心配だ。
「流石にそんな子供じゃないし大丈夫だから。
と言うか本当に家すぐ近くだし」
「そう?
じゃあここで……」
「うん………」
また連絡するねとここで別れた。
渚は叶芽が帰って行くのを暫く見送ってから、踵を返し元来た道をまた戻っていく。
来た時とは違い、1人になったこの道は寂しい。
なので小走りに、早くワイワイと騒がしい家族の元へ帰ろうと思う。
一方叶芽はただいまーと高級住宅街の一角の豪邸に帰宅する。
「お帰り、遅かったな」
帰宅早々母、千歳が少し険しい表情でそうチクリと刺してくる。
「そうかな?
別に友達と食事してきただけだよ?」
「本当に?」
それ程遅くなったとは思わないが、今まで佑真以外とこんな風に何処かへ行くことがなかった為、突然今日友達と遊びに行くからと言ったのを怪しまれている。
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