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友達とは……⑩

 渚が聖雷へ見学に来ていたと初めて知る叶芽は少し驚いた。 「ナギは聖雷に推薦されるくらい凄いなんて初耳」  そう言うと渚はバツが悪そうに曖昧な返事をした。  するとその横から唯人が代わりに答えた。 「兄ちゃんαだからな。 皆聖雷に行けばいいのにって言ってたんだけど。 ホント勿体ねぇよなぁ」 「え、ナギはαなの?」  渚がαであることも初耳である。 「え、ああ……まぁ……」  渚としてはこの場で知られたくはなかった。  叶芽はΩだ。  だからαに対してどう思っているかも分からないので、自分がαだと言うのを躊躇っていた。  とは言え、いずれは分かってしまう。  だけど言うタイミングや場所は自分で決めて、自分の口から言いたかった。  すると空気を読まない唯人がこんなことを言い出した。 「聖雷って事は叶芽さん?は頭いいってことッスよね? 宿題教えて欲しいッス!! うち来ませんか?」 「え、俺?」 「ちょ、唯人いきなり何言ってんの?」  まさかの誘いに渚もタジタジだ。 「だって兄ちゃん宿題見てくんないんだもん」 「俺は自分の宿題もあるし、家の事やるのに精一杯なの。 大体授業をちゃんと聞いてたら理解出来る筈でしょ? 唯人は授業ちゃんと聞かないし、努力しなさすぎ」  渚に叱られてシュンと小さくなる。  それを見た叶芽は少しだけ唯人が可哀想に思えてきた。 「あ~まぁ、今日は遅いから無理だけどまた今度ならいいよ。 って言っても俺もそんな頭良くないよ。 受験だけ死ぬほど頑張って力尽きて今成績ヤバいし……」  赤点取らないようにするのが精一杯と言うと唯人は大丈夫だと言う。 「受験勉強って事は中3までの勉強は聖雷レベルってことっしょ? 俺は兄ちゃんと同じ高校目指してるから全然大丈夫!!」

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