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友達とは……⑪
今年受験生の唯人は兄、渚と同じ高校を目指してると言う。
家から近く、偏差値もさほど高くもない。
唯人には丁度良かったが、今の成績ではそれすらも危ういので渚に勉強を見てもらいたいが、渚も忙しい。
「まぁ、中学生までの勉強なら俺も大丈夫かな?」
叶芽は聖雷に入学出来る程なので唯人に教える事も可能かなと思う。
「じゃあ決まり。
今度うち来て教えて下さい」
唯人はいいが渚はどう思うかとそちらをチラリと見ると彼は、申し訳なさそうにうち来てもらっていい?と聞くので勿論と答えた。
叶芽としては佑真以外の友達の家に行くことなどほぼ無かったので楽しみだ。
「唯人、俺ら行かないといけないから先帰ってて」
叶芽を自宅まで送っていく途中だった。
これ以上遅くなるのは良くないと唯人とはここで別れ、叶芽と共に駅へ向かう。
「なんかごめんね。
あいつ悪い奴じゃ無いんだけど、騒がしいって言うか……」
「別に大丈夫だよ?
それに渚の家俺行ってみたいし」
「いや何もない家だよ。狭いし……」
そう謙遜する渚。
それよりも気になったのは、自分がαであると知られた事だ。
「……カナちゃん、俺さαなんだ」
「うん、唯人君が言ってたね。
唯人君もαなの?」
「いや、αなのは家族の中でも俺だけ。
皆βだよ」
「へぇ~」
思ったよりも自分がαと言う事に驚いていないというか、反応が薄いことに少々面を食らう。
やはりαの多い聖雷に通っていると慣れるのだろうか?
「あの、カナちゃんはαに対してどうとか無いの?」
怖いだとか近付きたくないとかは思わないのかと聞くと考えたこと無かったと答えた。
「だって俺の父親αだし、幼馴染みの親友もαだし、寧ろαの方がΩ嫌いな人が多いイメージ。
あ、父親も親友もΩに偏見無いけどね」
身近にαがいるので、怖いも怖くないも人によるとしか言えない。
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