60 / 114

二人の気持ち⑤

『カナちゃんの事が好き……』  そう聞こえた……  しかし未だ彼の言葉を飲み込めていない叶芽は、この人何を言っているんだろと考えてしまった。 「………え~っとカナちゃん、聞いてる? 俺めちゃくちゃ頑張って告白したんだけど、無反応は流石にツラい……」  はいでもごめんなさいでも何でもいいから返事が欲しいのにずっと無反応のままで不安になる。 「あの……なんかナギの口から俺の事好きとか聞こえたんだけど………」 「うん、だから色々考えて俺はカナちゃんに恋愛感情を持ってるってこと」 「…………え、待って、ナギは俺の事そう言う意味で好きなの?」 「さっきからそう言ってるんだけど……」  中々理解して貰えずフラストレーションが溜まる。  一方ようやく理解した叶芽は少々混乱していた。  だって本当は自分が告白しようとしていたし、フラれる覚悟だったのに逆に告白されてしまった。 「え~じゃあ俺悩んでたのなんだったわけ? まさかの両想いって俺なんて返事すればいいの?」 「え、待って!!両想いって…… カナちゃん俺の事………」 「あ、俺口に出てた!?」  無意識に言葉が口から出ていた叶芽。  思わぬ形で叶芽の返事が聞けた渚は嬉しいやらもっとロマンチックな展開にならないのか複雑である。 「なんかよく分かんないけど改めて…… カナちゃん、俺と付き合って下さい」 「はい、俺で宜しければ」  これで正式に恋人になった。  初々しく見つめ合う二人だが、何だか小っ恥ずかしくて叶芽は下を向いてしまう。  すると渚がねぇと、叶芽の目の前に移動してきた。 「な、何……?」  眉目秀麗な顔がアップで映し出され心臓が跳ねる。 「この間は付き合っても無いのにキスしちゃったけど、今度はキスしても問題ないよね?」 「え……あ、うん……」  緊張して思わず頷いてしまった叶芽に、渚は挑発的な笑みを浮かべると、唇を重ねた。

ともだちにシェアしよう!