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二人の気持ち⑨

 渚が手を洗いに行っている間叶芽はソファ椅子の上で体育座りになって膝に顔を埋め、はぁ~っと大きく溜め息をついた。  初めて恋人が出来、初めてのキスをし、そして人に抜いて貰うなんて経験の無い叶芽は恥ずかしさもあるが、ふわふわした気分だった。  これが大人の階段を登ると言う事なのかと言う嬉しさも同時に込み上げる。 「カナちゃん、まだいじけてる?」  体育座りで顔を埋める叶芽に、戻ってきた渚はまだ彼が少し怒っているのではと心配する。 「いじけてない…… なんか、これが大人の付き合いなんだなぁって……」 「ふふっ何それ。 相変わらず面白い事言うよね」  怒ってはいないようで良かったと思うと同時に、叶芽の斜め上の発言は相変わらず読めず面白い。  渚は先程と同じ所に座ると叶芽に隣へおいでよと、横をトントンと叩き呼び寄せた。 「またキスとかするの?」 「今日はもうしないよ。 カナちゃんも疲れたでしょ」  そう言いながらも彼の手は腰を抱いている。 「それにしてもカナちゃん家って凄いよね。 ちょっと俺場違いじゃない? 大丈夫?」  冷静になって考えてみれば、自分との家の格差がとんでもないなと思う。  当然釣り合わないし住む世界も違うのに、果たして恋人になって良かったのだろうか……? 「……? そう言うのよく分かんないし、俺そんなこと気にならないし。 ナギは嫌?」  少し不安気に聞く彼にそんなこと無いと否定する。  ただ価値観など今後戸惑う事がありそうなので、そこは少々不安はある。  でもまぁ、今のところ何の不自由は無いので恋人であることを思う存分味わおうと渚は思う。 「ねぇ、今度デートしようか」 「デート?」 「うん。何処か行きたい所があれば聞くけど」  そう言うと叶芽は渚から目線を外し考える。 「う~ん…… 逆にみんなどんなデートしてるの?」  そもそもデートとはどう言う所に行くのか分からないので質問を返した。

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