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恋人⑩
「じゃあ俺の今までの片想いは何だったってんだよ!!
折角カナには他に運命がいるって諦めたのに」
悲痛な面持ちでそう訴える。
「片想い……って………?」
彼の言う片想いの意味を理解出来ていない。
すると佑真は徐に叶芽の目の前に近付いて、顎にそっと手を添え、叶芽の顔を上に向かせると、その唇に自らの唇を重ねた。
「………っ!?」
突然キスされた叶芽は驚きの余り思考停止してしまう。
佑真は数秒で離れたが、叶芽はこの瞬間がもっと長く感じた。
「俺はお前が好きだ。
あの男よりもずっとお前を理解してるし、相応しいと思ってる。
なぁ、俺にしろよ………
一生大事にするからさ」
「何……言って………」
思ってもいない佑真からの告白は予想だにしない事だった。
すると叶芽はこんなことを思った。
モテ期か……?
短期間にイケメンα2人から告白されるなど人生でそうそう無いだろう。
モテる事に悪い気はしない。
少しだけニヤけてしまう。
いやいや、自分は渚と付き合っているのだから佑真とは付き合えない。
「俺、ナギが好きだから………」
「それはもう分かった。
だったら俺に振り向かせるだけだ」
「いやいやいや、俺浮気なんてそんなクズ野郎にはなれませんよ?
いやそもそも俺はナギだけが好きで………」
「だから宮市渚に宣戦布告するだけだよ。
正々堂々とお前を俺に惚れさせてやるって宣言」
「いや…………」
何やら嫌な予感しかしない。
これを一体どう渚に伝えるべきか、そう悩んでいると叶芽のスマホが鳴った。
「げっ、ナギ………」
こんな時に限って渚から電話が掛かってきた。
出るべきか出ないべきか迷っていると佑真が出ればと言うので、電話に出た。
「もしもし……」
『あ、カナちゃん、今大丈夫?』
「う、うん………」
出たはいいが、この状況で何を話せばいいと言うのか………
すると横から佑真がスマホを奪う。
「ああちょっと!?」
慌てる叶芽を無視し電話を代わる。
「もしもし俺だ、沢田佑真………
お前に言いたい事がある」
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