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恋人⑪
スマホを奪い取った佑真は何を言い出すのか……
叶芽は彼からスマホを取り返そうとするが、華麗に避けられてしまう。
「俺はカナが好きだ。
お前よりこいつを幸せにしてやれると自負してる。
まぁでもこいつは何故かどうしてもお前がいいっつうから、だからお前から全力で奪ってやるよ」
「ちょ、佑真!?」
電話越し挑発的な言葉を口にする佑真に叶芽は、これ以上話をややこしくしたくなくて何度も電話返せと訴えるも無視され、挙げ句の果てに一方的に電話を切って返してきた。
「え、嘘切ったの?
もしも~しナギ~……………
…………嘘でしょ」
一応確認のために電話に出るが、うんともすんとも言わなかった。
折角掛けて来てくれたのにこんな切り方をして失礼過ぎではと叶芽は憤る。
もう一度かけ直して謝った方がいいのではと考えるが、佑真がそうさせてくれなかった。
「全力でお前を口説くのを宮市に言ったら、ケンカ買ってくれたぜ。
つってもこれ以上キスも、それ以上の事も強いるつもりはねぇから。
恋人じゃねぇからちゃんとそこは弁えるけど、これくらいはいいよな?」
そう言って頬を手の甲で撫でてきた。
「いや…………」
優しく慈しむように撫でられ、今までこんな撫でられ方したこと無いと戸惑う。
しかも優しく微笑まれ、こんな佑真は知らないと変に錯覚してしまいそうだ。
そんなムードの中、それを破るように部屋がトントンとノックされた。
「ふあっ!?」
いきなりの事で驚いて叶芽はビクッと肩を震わせながら変な声が出た。
「坊っちゃん、佑真さん少し宜しいですか?」
声の主は早苗だ。
ドアを開けて良いかと許可を求めて来るのでどうぞと招き入れる。
「佑真さんいらっしゃいませ」
「お邪魔してます」
早苗はにっこりと笑って本題に入る。
「佑真さん今日は晩御飯はどうなさいます?」
これから夕飯を作るので佑真も食べて行くかと聞きに来たようだ。
家族ぐるみでよく互いの家で食事を共にするので早苗も佑真が食べて行く前提で聞いている。
「じゃあ食べてく」
「かしこまりました。
ではまたあとで」
そう言って早苗は足早に夕飯作りに行ってしまった。
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