昨日佑真から罵倒のような言葉を投げられショックを受けていた叶芽が心配で、放課後電話を掛けた渚。 すると何故か途中からあの佑真が電話に出た。 言いたい事があるのだと…… そして……… 『俺はカナが好きだ。 お前よりこいつを幸せにしてやれると自負してる。 まぁでもこいつは何故かどうしてもお前がいいっつうから、だからお前から全力で奪ってやるよ』 そう、宣戦布告された。 「………ふ～ん、へぇ～、そう……… 勝手にすれば？」 佑真が叶芽を好きなのは初対面の時からひしひしと伝わってきた。 叶芽を罵倒したのも自分に取られた焦りからなのは分かっていた。 そして今回のこの挑発。 叶芽と一緒にいることから仲直りしたのだろうか？ いや、この電話で叶芽にも告白したようなものだ。 いくら恋人である自分の方に分があると言えど、幼馴染みで互いをよく知る2人である事から不利な部分もある事は事実。 それに自分は貧乏で、家柄は全く釣り合わない。 それでも渡すつもりはない。 取られてたまるものか…… 「取られるつもり無いケド」 沢田佑真に気移りする前に自分にゾッコンにさせればいい。 そう渚は自信満々に捉えた。 そんな2人の間に挟まれた叶芽は佑真と両親と食卓を囲んでいた。 早苗の作ったアヒージョはとても美味しいのに、何処か味を感じない。 それは隣に佑真がいるせいだ。 「久々に早苗さんの料理食べた。 美味い………」 佑真がそう褒めると早苗は顔を綻ばせ、ありがとうございますと嬉しそうだ。 「今日は叶芽が迷惑を掛けたみたいですまなかったね」 父、麻人が息子が迷惑を掛けたと謝罪する。 「いえ、カナは俺の兄弟同然の存在ですし、俺もカナに言い過ぎた部分もあるので」 自分のせいですと語る佑真に両親の表情は和らぐ。 昔から両親への受けはいい佑真。 賢く、いつも叶芽を引っ張ってくれる保護者のような彼は両親からの信頼が厚い。 それを横でジトッと叶芽は見つめる。 今回は佑真が全面的に悪いのに何故か自分が悪者になった気分である。