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甘い時間③

「て言うかナギの方が上手いじゃん。 びっくりした」 叶芽に上手だと言う彼の方が上手い。 ずっと聴いていたいとさえ思う歌声だった。 本当にこの人は何でも出来るんだなと思う。 「ナギはよくカラオケ来るの?」 「ん~そこまで来てないよ。 3回くらい」 「でも凄い上手だよね」 「そう?でもまぁカナちゃんに褒められると嬉しい」 じゃあもっと歌ってと促すと渚は次々と曲を入れて行く。 「て言うかカナちゃんも歌いなさいよ。 もしかして楽しくない?」 「楽しいよ。 俺はただナギの歌が聴きたいだけ。 ナギって声がいいよね。 なんか眠たくなる」 彼の声は心地が良い。 ずっと聴いていたくなる。 そう言われて気分を良くした渚は続けて5曲歌った。 途中食事やドリンクを飲みながら、たまに叶芽にも歌わせながらあっという間に時間が過ぎる。 そろそろ時間だと知らせる音が鳴る。 出ようかと直前まで歌っていた渚が振り向くと、そこには眠そうにうとうとする叶芽の姿がある。 渚の歌声が子守唄のようになってしまったらしい。 その可愛らしい姿にイタズラ心が湧いてしまい、彼の半開きの唇にキスをした。 「んんっ……!?」 突然キスされた叶芽は一気に目が覚める。 「ねぇ、2人きりでゆっくり出来る場所に行きたい。 カナちゃん家行っちゃダメ?」 綺麗な顔でお願いされ、叶芽は頷くしかなかった。 それから会計へ急ぎ、カラオケ店を出るとすぐに柊家のマンションに向かった。 家に着くや否や、渚は我慢出来ないとばかりに玄関で口付けてきた。 「ナギッ…ん……」 カラオケ店の時とは違い少し乱暴に、深く口付ける。 叶芽の顎に添える指を少しずつ下に這わせながら移動させる。 「ふっ……んん……」 喉元を優しく撫でて、それから鎖骨を撫でる。 こんな触れ方をされたことが無い叶芽は身体がゾクゾクし、立っていられなくなって必死に渚にしがみついた。 それに上手く息が出来なくて口から唾液がだらしなく零れた。 「ねぇ、これ以上の事シたい。 ベッド行ってもいい?」 そう誘う渚に思考が回らない叶芽はわけも分からず頷いた。

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