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格差①
藤堂を出迎えたのは叶芽だけではなく斐紹と早苗もだ。
「お帰りなさい」
「ただいま。
あなた方には迷惑をかけてしまいましたね」
「そんなこと……」
そもそも家政婦の2人を柊家に雇う際面接をしたのは藤堂である。
Ωが2人いる柊家なので、そこは慎重に選んだ。
藤堂の見る目は良く、2人共柊家にはなくてはならない存在になっている。
「そう言えばお庭が少々荒れておりますが、手入れをしたのはいつですか?」
「さぁ、どうだったか……
麻人……?」
「最後に来てもらったのはいつだったかなぁ……
最近忙しかったから頭に無かったなぁ」
「左様ですか……
ではすぐにでも庭師に連絡を入れます」
だだっ広いこの庭。
現在草木が少々伸びすぎている。
早速藤堂が仕事を開始する。
すると斐紹と早苗が藤堂に謝罪を口にする。
「すみません、そこまで気が回らなくて」
「いえ、これはあなた方の仕事では無いですからお気になさらず」
爽やかな笑顔で対応する彼は本当に柊家に必要不可欠な人である。
そして叶芽は藤堂を連れてオカメインコがいる部屋に行く。
「2人共覚えてる?」
2羽を藤堂に近付けると人見知りなオカメインコだが、怖がること無く彼の手に乗った。
「覚えていてくれているようですね」
そうにっこりと笑う。
「それにしても大きくなられましたね」
叶芽の姿を見てそう呟く。
「そうかな?
そんな身長伸びてない気がするけど」
「そんなこと無いですよ。
以前よりも目線が上がりました。
それに大きくなられたのは身体だけでは無いです。
今年から高校生になられましたしね」
高校生になった叶芽は以前よりも大人っぽくなったと藤堂は言う。
それに気を良くしたのか叶芽はこんなことを藤堂に話した。
「父ちゃんと母ちゃんには内緒。
俺ね、恋人出来たんだ!!」
「え……?」
いつも冷静な藤堂が少し驚いた顔をした。
ピュアで人とあまり交流を持たない叶芽に恋人は無縁だと思っていたから、彼もそんな年頃なのだと実感した。
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