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格差③

この日のデートは渚が手料理を振る舞ってくれると言う。 だがその前に食材も買わなければならない。 「この辺スーパーとかってあったっけ?」 「さぁ?考えたことない」 「ああうん、だよね」 まずはスーパー探しからやらなくてはならない。 渚はスマホでスーパーを探すと、ここからおよそ10分の所にある商業施設の中の一角に見つけた。 「取り敢えずここ行ってみる?」 「うん、よく分かんないけどナギにおまかせします」 叶芽は何も分からないのでただ渚に着いていくだけだ。 そして渚に着いてその商業施設へ行くと色々な店があって少し楽しそうだ。 「あ……… ねぇカナちゃん、ちょっとここ見てもいい?」 渚が立ち止まった店はメンズ服の店。 ストリート系な服が並んでいる。 「うん、いいよ」 入ってみたものの、叶芽は少し居心地が悪い。 こう言ったファッションとは無縁で、店員さんも少し厳つい雰囲気なので渚にピッタリとくっ付いている。 「あ、これいいなぁ」 渚が目をつけたのは黒のパーカーだ。 叶芽はこのパーカーを今彼が着ている服と少し似ていると感じ、こう言う服が好みなんだなと思う。 「似合いそうだね。 買うの?」 そう聞くと彼はいや、と服を元の所に戻した。 「値段も俺には厳しいし、まぁ見るだけと言うか……」 「見るだけなの?」 「うん、そもそもここのブランド高いし……」 「ふぅ~ん………」 最初から買うつもりが無いのに店に入ると言う概念が無い叶芽には不思議な光景である。 「カナちゃんはどう言う服が好き?」 「う~ん……… あんまり自分で選ばないしなぁ…… 俺服のセンス無いからいつも親とかが選ぶし」 服にあまり拘りが無い叶芽はファッションについてはあまり分からない。 「そっかぁ。 じゃあ俺が選んだの試着してみてくんない?」 「え………」 そう言って渡された彼の選んだ服は叶芽が今まで着たことの無いタイプの服だ。 試着するだけなら別にいいかと叶芽は試着室で着替えた。

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