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格差⑤
上から下まで一式全て買うと言う叶芽に、パーカーだけを買ってもらうつもりの渚は慌てる。
「ちょっと待って、俺この服だけのつもりだったんだけど」
「え~だってどうせなら全身揃えないと」
そう言って渚の分と自身の分の支払いへレジに向かう。
最早唖然とするしか無い渚。
あれ全部を支払うとすれば一月分のバイト代は簡単に飛ぶなと苦笑いが出る。
結局数万円を全て支払った叶芽。
これを素直に受け取っていいのか迷う渚だが、折角お金を出してくれたのだから有り難く頂こうと思う。
そして2人はまた施設内を歩く。
すると今度は叶芽がある店で足を止めた。
「ねぇこれナギが付けてたイヤーなんとかって奴?」
「イヤーカフね。
そう、こう言う奴。
これは女性用って感じだけど、メンズ用もあると思うよ。
見てみる?」
「うん!!」
叶芽の希望でこのイヤーカフがあるアクセサリー店へ入る。
女性用アクセサリーがある中、メンズ用も女性用と比べ少ないが色んな種類があった。
「俺もナギみたいなのしてみたいな」
「イヤーカフ?
う~ん……まぁ、カナちゃんなら何でも似合うとは思うけど………」
先程の服といい、正直あまりこう言ったファッションは叶芽のイメージではない。
叶芽の事だからどんなファッションでも着こなすとは思うが、柊家の子息にこんな格好をさせてもいいのだろうかと言う罪悪感もある。
しかし当の本人はとても楽しそうなのであまり否定も出来ない。
すると叶芽はあるものに目をやる。
「指輪………」
そう呟いた。
やはり叶芽としては恋人が出来た事で指輪に憧れを抱く。
いつか渚とお揃いの指輪を付けたいと思う。
「指輪か………」
渚としても指輪を買ってあげたいと思うが、渚の手持ち金ではあまり高いのは買えないし、安物は叶芽には相応しくない。
かと言って叶芽に買わせるのは男としてのプライドがあるので嫌だ。
どうしようかなと悩んでいると叶芽がこれいいなと指を差した。
その指の先にはリングが2つクロスしたようなデザインの指輪がある。
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