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格差⑨

楽しいデートも終わり、叶芽はマンションの駐車場に停まっている一台の高級車の後部座席のドアを開ける。 「お帰りなさいませ叶芽様」 「ただいま」 運転席にいる執事の藤堂。 恋人がいると打ち明けている彼が、迎えに来ると言い張るので仕方無く叶芽は車に乗り込む。 「別に迎えに来なくてもいいのに」 「貴方は柊家のご子息ですよ? 万が一何かあったらどうされるのですか? 本当はデートにも着いて行きたいくらいですよ」 正直叶芽も両親も危機感が無いと藤堂は思う。 自分の立場がどれ程のものか柊一家皆分かっていないのではと藤堂は嘆く。 「今後はなるべく送り迎え致しますので悪しからず」 「え~………」 不満タラタラな叶芽に藤堂はため息をつく。 ただでさえ彼はΩだと言うのに、首輪も着けないで出歩いているのだから、病み上がりだと言うのに気苦労が絶えない。 それだけではない。 藤堂が一番の問題だと思う事…… それは叶芽の恋人だと言う男だ。 叶芽には申し訳ないが、相手の男の事を色々と調べさせて貰った。 するとどうだろうか…… 出てくる情報に藤堂は頭を抱えた。 「宮市渚17歳。5人兄弟の長男でα。 父親はトラック運転手で母親はスーパーの従業員」 はっきり言って貧しい家庭、低所得層の部類である。 柊家とは全くもって釣り合わないが、それだけではない。 今はまともに頑張っている父親だが、昔随分ヤンチャをしていたようだ。 そして母親も元キャバ嬢。 いくら親の事とは言え、柊家は旧華族の名家である。 華族が廃止されたその後は叶芽の曾祖父が現在の会社を始め、ここまで成功を納めてきた。 なのに叶芽が選んだ相手はこれだ。 「話しにならない!! 私が居ればこの男を近付ける事すらさせなかったのに!!」 自分が居れば2人は出逢う事もなかったのにと、病で柊家を不在にしてしまった事を悔いた。 そして万が一2人が番になったり、子供が出来たりなんてしたら最悪だ。 それだけは何としてでも阻止し、そうなる前に別れさせなければならないと藤堂は考える。

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