100 / 114

格差⑩

「ただいまー」 家に帰った叶芽は自室に戻る。 そして今日買った服を袋から取り出して藤堂に渡した。 「取り敢えずこれ洗濯しといて」 買ったばかりの服は洗濯してから着るのが当たり前。 藤堂に洗濯を宜しくといつものように頼むが、藤堂は渡された服に少々戸惑った。 「この服は一体何です? あまり叶芽様らしくない服ですが………」 明らかに叶芽が選ぶような服ではない。 「ん?恋人と洋服買った。 今度のデートで着たい」 「はぁ………」 正直品性の欠片も無い服だと藤堂は不快感を覚える。 このまま相手の男に感化されて、変な風に染まってしまえば大変なことになると考えた。 しかし当の叶芽は浮かれている。 藤堂の心配など全く気付く様子もない。 藤堂が部屋から去った後は渚に家に着いたとメッセージを送る。 するとそれから数分後渚から「無事着いたなら安心した」とメッセージが返ってきた。 それから今日は楽しかったとお互い何度かやり取りをした。 叶芽は首に掛けたチェーンにぶら下がる指輪を手に取り、チェーンから外すと再び右手の薬指に着けた。 それを見てふふっとニヤける。 そしてその指輪を今度は左薬指に嵌めた。 いつかこの指輪が結婚指輪になればいいなぁなんて思いながら…… 一方叶芽が家に帰ってから暫く経って漸く家に着いた渚。 帰路に着きながら叶芽とメッセージのやり取りをしていた。 今日は予定を変更してのデートだったが、叶芽が喜んでくれたならばこちらも嬉しい。 渚は胸元にぶら下がる指輪に触れた。 それをシャツの下にしまい家の中に入る。 「ただいま」 「兄ちゃんお帰り」 「おかえりー」 兄弟達がおかえりと出迎える。 すると唯人が渚が持っている袋に注目した。 「兄ちゃんなんか買ったの?」 「ん?ああ、まぁ………」 正直あまり詮索されたくない所である。 何故なら渚の金ではなく叶芽の金で購入したものだから。 しかし詮索されたくないと思っても唯人が逃がしてくれる筈もない。

ともだちにシェアしよう!