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格差⑪

渚の持っている袋に注目する唯人は何買ったのと興味津々に聞いてくる。 全く、こう言う事には目敏い。 「別に、ただの服だよ」 「え~見せて見せて!!」 「あ、おい!!」 袋を唯人に奪われ中身を取り出されてしまう。 「あ、これめっちゃいいなぁ。 俺も欲しい……」 出た、唯人の俺も欲しい。 こうやっていつも渚は弟に譲るはめになるのだが、今回はきっと無理だろう。 「お前にはサイズがデカいと思うよ」 「…………」 そう、渚と唯人では身長差が20cm近くもあるので唯人には合わない。 その事実に唯人は不満そうな顔をする。 「あ~あ、俺も新しい服欲しいなぁ。 兄ちゃんはいいよな。 いつも新品を着れてさ~。 俺はいっつも兄ちゃんのお下がりだよ」 次男の唯人はいつも渚のお下がりばかりなので、たまには新品が欲しいと嘆く。 とは言え渚だって中古品がほとんどだ。 服だって今持っている物は古着屋で買った物ばかりで新品は今回叶芽に買って貰ったこれだけだと思う。 「でも制服は新品買って貰ってたじゃない」 妹の菜々が言う。 「それは中一の時だろ。 兄ちゃんの制服がデカかったから新しいの買って貰えたけど、今は普通に兄ちゃんのお下がりだって!! しかも今着てるの兄ちゃんが中二の時の!! いや、正しくは中一の終盤から着てた奴!! マジで理不尽だ!!」 制服のラベルには渚の当時のクラスと名前が書いてある。 そして二度、書き直した後がしっかり残っている。 同じ兄弟であるにも関わらず渚との身長差に唯人は不満タラタラである。 確かに弟は兄のお下がりばかりなのは可哀想ではあると渚は少し同情する。 それにこの服は自分のお金で買った物では無いから余計に…… それを考えるとバイトを減らしたのは良くなかったかと少し後悔する。 かと言ってまた増やすつもりはない。 兄弟の為にお金を稼ぐより叶芽との時間を優先させたいと思ってしまう自分は酷いだろうか? 渚は子供部屋に行くと首から下げた指輪のネックレスを外し、自分の机の引き出しの奥にしまった。 これだけはいくら兄弟と言えど知られたく無いし、触られたくない。

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