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相応しい人⑤
風呂から上がって佑真の部屋にやってきた2人。
どうも気まずくて叶芽は会話どころか目も合わせられない。
「そうだ、この間新作のゲーム買ったけどやる?」
「ふぇ!?」
「新しいゲーム。
やる?」
「う、うん………」
あんなことをしておいていつも通りに接してくる佑真に戸惑いを隠せない。
本当に何を考えているのか分からない。
佑真は壁掛けの大画面にゲーム画面を映し出し、叶芽とゲームをプレイする。
風呂での事はまるで気にする様子が無いので叶芽もゲームに夢中になって先程の事はこの時だけは忘れていた。
「うっわ負けた!!
佑真さ、もうちょっと手加減するとかさ~」
「無いな」
「ですよね~」
気が付けばゲームをして1時間経っている。
そろそろ寝る時間である。
ゲームを片付けて、歯磨きをしてまた佑真の部屋に戻る。
「ねぇえねぇ佑真」
「何?」
「何じゃなくて。
なんで俺佑真の部屋にまた来てんの?
なんでベッドに枕が2つあんの?」
叶芽は完全に別々の部屋で寝るものだと思っていた。
叶芽の家と同じく、部屋は余っている筈。
この状況は一体なんだ?
「なんでって一緒に寝ればいいじゃん」
「いやなんで一緒に寝るの?」
「いいじゃん。前は普通に一緒に寝てただろ」
「それは、そうだけど………」
佑真の言う通り、お泊まりの際は一緒のベッドで寝ていた。
「大丈夫。
お前の寝相の悪さには慣れてる」
「そう言う事じゃなくて!!
……って、俺そんな寝相悪い?」
「たまにお前に蹴られたり手が顔に当たったりしてたな。
まぁ俺は気にしないけどな」
話が反れてしまっている気がして、もう何と言葉を返せばいいのか分からない。
何を言っても佑真に言葉で敵う事は無いので面倒になって大人しく彼の言う通りにする事にした。
「そう言えばベッド変えた?
なんか前より広い気がする」
「ああ、一回り大きいのに変えた。
これでお前の酷い寝相でも多分大丈夫。
………いや大丈夫では無いか」
「俺そんな寝相悪く無い、筈!!」
今まで自分の寝相が悪いと思った事はない。
なので佑真が大袈裟に言っているのだと心の中で反論した。
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