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相応しい人⑥

結局佑真に押しきられ一緒に寝た叶芽。 朝目が覚めると温かい体温に心地よさを感じ、二度寝してしまいたくなる。 しかし、ここで慌てて眠たい目を無理やりこじ開けた。 何故なら叶芽は佑真に抱き締められながら眠っていたからだ。 互いに向き合いながら、叶芽は佑真の胸にすっぽり埋まるように寝ていた 「ちょっ佑真……!!」 未だ眠っている佑真の腕の中から脱出しようとするも、逃がさないとばかりに余計に抱き締められ苦しくなる。 「ゆ、佑真起きて!! 俺潰れるっ!!」 佑真の肩をポンポンと叩き必死に訴えていると、漸く彼も目を覚ました。 「カナ……… もう起きてたのか珍しい……」 「いやだって俺こんな………」 何故こんな風に抱き締められ眠っていたのか……? すると佑真は信じられないような事を言う。 「お前が俺の胸に顔埋めてきたから抱き締めてやったらスリスリしてきたんだ。 小動物みたいでちょっと可愛かった」 「………っ!!」 寝ている間に自分はそんなことをしてしまったのか? 叶芽はショックで両手で顔を覆った。 それと同時にこうも思った。 これは浮気になるのかと……… いやいや、寝惚けていたのだから不可抗力と言ってもいいだろう。 きっとセーフだ。 いや、どんな理由があろうとアウトでは? そもそも浮気とは何処からが浮気になるのか? 「ああ~もう分かんない!!」 頭を抱えるほどパンクしそうだ。 その様子を何をしているんだと佑真は冷めた目を向ける。 すると叶芽が佑真の方に急にバッと顔を向けてくる。 「ねぇ、浮気って何処から浮気なの?」 「はぁ?知るかよ。 一夜を共にしたくらいからじゃねぇの?」 「い、一夜とはただ普通に一緒に睡眠取っただけなのか、それともそれ以上の奴をヤったらなのか……」 そう聞くと佑真はニヤリと笑った。 「さぁ?どうだろうな。 お前はどう思うわけ?」 「えっ!!ど、どうって………」 逆に質問を返されまた頭を抱えた。 そして佑真は悩む叶芽をみてクスクスと笑う。 喜怒哀楽、感情豊かな叶芽を見るのは面白い。 本当に飽きないなと思う。

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