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相応しい人⑩

住む世界が違う…… そう言われて反論出来ず、苦笑した。 だってたったさっきまで柊麻人の事を調べていて思っていた言葉だったから。 「申し訳ございませんが、貴方の事を調べさせて頂きました」 「………?」 「貴方のご家族、ご両親のご職業や過去の事も…… 柊家は由緒ある家柄です。 きっと貴方も叶芽様もそんなことは関係無いと仰るかと思います。 ですが残念ながら、世間と言うものはそう言った事には敏感。 叶芽様がΩと言うことを世間に知られないよう頑張ってもいずれ表に出るかもしれません」 だからせめて後ろ指を指されるような者を配偶者に選ぶ訳にはいかないと藤堂は言う。 まだ付き合いたてとは言え、つがいになる可能性もある。 その前に別れて貰うしかない。 そんなことを言われてもそう簡単に答えが出せる訳でもない。 本当なら別れないと突っぱねればいいのだが、それが出来なかった。 何処かで本当に自分が叶芽と恋人になって良かったのかと考えてしまっていたから。 「取り敢えず忠告はしました。 叶芽様を想うなら離れて下さい」 「…………」 渚は何も発する事が出来ず、藤堂とはここで別れた。 スマホを見ると数分前に叶芽から着信が入っていた。 けれど今は何も話す気になれず、折り返しの電話を掛ける事が出来なかった。 一方藤堂は運転しながら溜め息をついた。 叶芽にきちんと説明しなくてはいけない。 そう思うと、悲しい顔をした叶芽を思い浮かべ気が重い。 けれど渚にも言ったように叶芽が表に出てしまった場合、Ωと言うことで色々と言われるだろう。 せめて後ろ指を指される者を結婚相手に選ぶわけにはいかない。 叶芽には家柄が良く、誠実な相手を選んでほしい。 理想は沢田佑真だ。 彼なら家柄も悪くないし、幼い頃から親しく、知った相手であるので出来ることなら2人がくっついて欲しいと藤堂は思う。 とは言え、それこそ2人が了承しなければそれまでだ。

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