113 / 114

相応しい人⑫

優しくしたら俺にしてくれんの?と佑真は言うが、そう言う問題ではないと反論する。 じゃあどう言う問題かと問われたら答えられない。 「じゃあそう言う問題じゃん。 分かった、優しくするよ」 そう言って佑真は穏やかな笑みで叶芽の頬を撫でる。 その行為にビクッとした叶芽に悪い、びっくりしたよなとすぐに手を離した。 「大丈夫、もう触んねぇから。 お前が触っていいって言うまで待つからさ」 「…………」 なんか怖い……… こんな佑真は佑真じゃない、なんだか気持ち悪いと叶芽は思った。 「ごめん、俺今日は帰る」 どうにも落ち着かず今日はもう家に帰る事にした。 部屋を出てリビングに行くと奈緒美がソファで寛いでいた。 「おば様、俺そろそろ帰ります」 「あらそうなの?」 「はい、お邪魔しました」 奈緒美と挨拶を交わすと叶芽は沢田邸を後にし、すぐ近くの自分の家に戻った。 家に戻ると藤堂が出迎えてくれた。 そして藤堂に話があると言うので、叶芽の部屋へとやって来た。 「話って?」 「ええ、大変申し上げにくいのですが………」 勿体つけるような言い方に叶芽は訝しげに眉を寄せる。 あの藤堂が言いづらいと言う事に少々不安を覚えた。 そしてその不安は現実の物となる。 「今日、宮市渚さんとお会いしてきました」 「は?」 思いもよらない話しに叶芽は頓狂な声を発してしまった。 何故藤堂が渚と会ったのか? 背景が全く見えないので叶芽の頭の中は混乱状態だ。 そんな叶芽に藤堂は言いづらそうに話を続ける。 「叶芽様、どうか冷静に…… 私は宮市さんとお会いして、叶芽様と別れて頂くよう申し上げに参りました」 「は?何、どう言う事?」 思ってもない言葉に動揺する叶芽を宥めるも冷静になれる筈もなく、叶芽は藤堂に詰め寄る。 どれ程渚を好きなのか知っている筈なのに何故そんなことを言ったのか……… しかし藤堂は、どうかお聞き入れ下さいと言うばかり。 叶芽は埒が明かないと今すぐ渚に会いに、彼の自宅に向かおうとするも藤堂が腕を掴み止めた。

ともだちにシェアしよう!