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第一章・2
原っぱ、とは子どもたちの間で使われている通称で、大人たちは『刑務所跡地』と呼んでいる。
慎や亮太の生まれる、まだずっとずっと前に、軽犯罪の受刑者を収容する施設がそこにはあった。
老朽化した建物は取り壊され、もう誰もいない。
再開発の計画がある、とはいうものの、そのまま一面シロツメクサの生い茂る原っぱになった。
南側には、小さな林と浅い沼。
二人はよくそこで、メダカを捕まえた。
東側には、枝ぶりのいいホルトノキが生えている。
二人はよくそこで、木登りをした。
西側には、ごろごろと岩が転がっていた。
二人はよくそこで、エンマコオロギを捕まえた。
北側には、下へ伸びる細い石段があった。
二人はよく、そこから見える小さな家について話した。
「誰が住んでるんだろ」
「ぽつんと一軒家、だよね」
そんな原っぱだったが、今日は目新しいものが二人を待っていた。
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