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第一章・3

「何だ、これ! ボロいタンス!」 「きっと誰かが不法投棄したんだ」  俺たちの原っぱに、勝手なことしやがって!  横たわり、だらしなく引き出しを半分開けたタンスを慎は蹴飛ばした。  すると、奥の方からか細い鳴き声が聞こえて来たのだ。 「え? ネコ?」 「ネコの声だ!」  重い引き出しを二人で動かすと、そこには小さな子猫がいた。 「わぁ、ネコ! 子猫だ!」 「かわいい!」  しかしネコは、あまり元気ではなかった。  見てわかるほどに腹が凹んでおり、鳴き声も小さかった。 「お腹すいてるんじゃない?」 「俺、牛乳買ってくる!」  亮太が何か言う前に、慎は駆け出していた。 「ネコ用ミルクの方が、いいと思うけどな……」  ね、そうだよね。  亮太は、白地に明るい黄土色を散らした毛皮の子猫を撫でながら、つぶやいた。

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