4 / 33
第一章・4
よほどお腹がすいていたのだろう。
子猫は、冷たい牛乳を文句も言わずに夢中で舐めた。
その姿をにこにこと眺めながら、慎はそっと亮太にささやいた。
「な、この子猫、俺たち二人で、ここで飼おうぜ」
「ここで?」
亮太は考えた。
どちらかの家に、連れて帰るわけには……、いかないな。
「僕の家アパートだし、慎の家は……」
「お父さんが動物嫌いだから、絶対許してくんない」
タンスの引き出しの中なら、誰にも気づかれないさ、と慎は身を乗り出した。
「名前、付けようぜ。何がいいかな」
そんな慎の楽観的な様子に、亮太はくすりと笑った。
慎は、いつでもこうなんだから。
でも、そんなところも大好き。
「きな粉餅みたいだから、きなこ、でどう?」
「いいな、それ!」
食べちゃいたいくらい可愛いな~、と子猫の頭を撫でながら、慎はご機嫌だった。
「亮太、これは俺たちだけの秘密だぜ。いいな?」
「うん、解った」
「じゃあ、指切り」
指切りげんまん 嘘ついたら 針千本飲ます
共通の隠しごとを一つ作り、二人は原っぱを後にした。
ともだちにシェアしよう!