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第一章・5
食後、お風呂に入り宿題をしているところを、慎は父親に呼ばれた。
「慎。お前は今日、サッカークラブに行かなかったそうだな」
「あ、あの。それは、足が痛くて、それで」
どうしてクラブをサボったことがばれたんだろう。
それは、母親の言葉で明らかになった。
「コーチの本間(ほんま)さんから、電話があったのよ。慎くん来ませんでしたが、どうかしましたか、って」
鬼コーチは、おせっかい焼きでもあったのか!
「お休みするなら、一言伝えてからにしないと。本間さん、心配してらしたわよ」
「は、はい」
母はやんわりと言ったが、父は厳しかった。
「少し足が痛いくらいで休むなんて、甘えだ。αなら、骨が折れるまでやってみろ!」
「ご、ごめんなさい」
大きく育った体を小さく縮めて、慎はあの子猫のように細い声を出した。
「それで? クラブを休んでどこで何をしてたんだ?」
(お父さん、そこまで訊いてくる!?)
慎はしばらく黙っていたが、父は解放してくれそうもない気配だ。
諦めて、原っぱへ行ったことを白状した。
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