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第二章・2

「実はね。ここには勝手に住んでるんだ。誰にも内緒でね」 「そうなの?」 「お家賃は?」  ぺろりと舌を出し、晶は照れ笑いだ。 「払ってないんだ。それに、誰かに見つかると困ったことになるのさ」 「解った」 「内緒にします」  僕たちだけの秘密だよ、と隠しごとは晶を含めた三人のものへと広がった。  子ども同士だけでなく、大人と秘密を共有することは慎と亮太の胸を弾ませた。 「絶対バレないようにしなくちゃな!」 「それには、注意が必要だよ」  晶宅からの帰り道、慎は亮太と別れ際に体の確認をした。  きなこの抜け毛が服に付いていると、秘密がばれる元になるからだ。 「慎、後ろ向いて」 「よく見てくれよな」 「あ、付いてた。きなこの毛」 「取って取って!」  細くて柔らかなきなこの毛を指につまんで、亮太は慎の目の前に持って行った。 「ほら、ね」  きなこの抜け毛だけでなく、亮太の顔もずいぶん近い。  慎は、頬を赤らめた。 「じゃ、じゃあ、な! また、明日な!」 「うん。バイバイ」  ランドセルを背負いなおすと、慎は家へ向かった。

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