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第二章・7
まだ早朝の、鳥しか起きていないくらいの時刻、晶はふと目を覚ました。
抱きしめていてくれるのは、愛しい人。
だが、その目がしっかり開いて自分を見ていることに気づくと、晶は苦笑いした。
「逃げたりしないよ」
「それは解ってる」
ただ、お前を見ていたかった。
そんな男の返事に、晶は瞼を軽く伏せた。
「霊界から逃亡して、あてもなくさまよっていたよ」
だが、人から『幽霊だ』と言われることが嫌で、この小さな家に隠れた。
「そして、待ったんだ。僕に希望を与えてくれる存在が現れるのを」
「希望、か」
そう、希望。
「お前は、絶望の中で死んだのか?」
「そうではなくって。また生を得られるのなら、希望に満ちた世界に生まれ変わりたい、って思った」
この上の原っぱには、子どもがよく遊びに来るんだ、と晶は男に言った。
「子どもには、未来が開けているでしょう。そこに、希望を見出したかったんだ」
「そんな子どもが、見つかったか?」
「うん」
良かったな、と男は晶の髪をくしゃりと掻き上げた。
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