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第三章 父の壁
「刑務所跡地の再開発が、決まったそうだ」
夕食時、慎は父の言葉に耳を大きくしていた。
「ずっと空き地でしたものねぇ。何ができるのかしら?」
「公民館や保育園、ゲートボール場などができるらしい」
「いいんじゃない? 遊ばせておくにはもったいないから」
聞かぬふりをしながら、慎はショックを受けていた。
(原っぱが。俺たちの原っぱが、無くなっちゃう!)
翌日、このニュースを亮太に一番に伝えたかった慎だったが、それは叶わなかった。
彼は、風邪をひいて学校を休んでしまったのだ。
「お見舞いに、行こう。でも、その前に」
慎は、晶に会いに行った。
そして、昨晩父が話した重大ニュースを口にした。
ところが。
「うん、僕も知ってたよ。その話」
「晶さんの家は、大丈夫なの!? 立ち退きとか、無いよね!?」
「実は僕、この家から出て行かなきゃならなくなったんだ」
「嘘!」
彼に、見つかっちゃってね、と言う晶の声に重なって、隣の部屋から知らない男が出てきた。
まるで、お葬式にでも出るような、全身黒づくめの目つきの良くない男だった。
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