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第三章・2
「ここには、あと三日しかいられないんだ。そこで、慎くんにお願いがあるんだけど」
「何? 何でも言って!」
「きなこ。この子を慎くんの家で飼えるように、お父さんを説得できない?」
「え!?」
晶に、厳格な父の話をしたことはないはずだ。
それをどうして、知っているんだろう。
一瞬だけ疑問が湧いたが、ずしりと重くのしかかってきた父のイメージに、すぐ消えてしまった。
「む、無理。お父さんを説得だなんて、無理……」
しょげてしまった慎の肩に両手を置き、晶は励ますように数回揺さぶった。
「慎くん。これからの人生、君にはたくさん乗り越えなきゃならない壁が現れるよ。これは、その最初の一つ。これを解決できなければ、きなこは死ぬよ」
「きなこが……!」
大丈夫、君ならできる、と晶は力強くその肩をつかんだ。
「亮太くんを今まで守ってきた君なら、できるよ」
「う、うん」
「亮太くんとこれからも一緒にいたいなら、思いきってお父さんにぶつかってごらん」
「解ったよ」
慎はきなこを晶から預かると、大切に胸に抱いて自宅へ向かった。
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