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第三章・3
玄関には、父の靴が並んでいた。
「お父さん、今日は休みだったっけ」
土日が忙しいサービス業の父は、平日が休みのことが多い。
慎は、きっと目を見開くと、父がいるであろうリビングへ入った。
「お父さん」
「慎、今日は塾の日だと……、何だそれは」
父は、すぐに慎に抱かれたきなこに目を付けた。
そして、言った。
「ダメだ」
「お願い、お父さん。俺が飼ってあげなきゃ、きなこ死んじゃうんだ!」
「捨ててきなさい。いや、保健所に連れて行こう」
すぐに立ち上がり車のキーを手にしようとする父を、慎は必死で止めた。
キーを素早く取り上げ、握りしめた。
「お父さん、きなこを飼わせて!」
「ダメだと言ったら、ダメだ!」
「どうして!?」
「お父さんは、動物が嫌いなんだ。知ってるだろう!」
急に騒がしくなったリビングに、母親がやってきた。
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