20 / 33
第三章・4
「二人とも、何を言い合ってるの? あら、可愛いネコちゃん」
「お母さん! ネコ飼ってもいいでしょ!? ね!?」
「慎、お母さんが許しても、お父さんは反対だからな!」
大体、と苦々しい顔で父親は吐き捨てた。
「あのΩの子と付き合いだしてから、お前は全くたるんでる。前はもっと、聞き分けのいい子だったのにな」
「お父さん! 俺の友達を侮辱すると、いくらお父さんでも許さないよ!」
沸騰し、渦巻く頭の中で、慎は考えた。
考えて、考え抜いた頭で、腹の底から声を絞り出した。
「明日の算数テストで100点取ったら、きなこ飼ってもいい?」
「は! よく言ったもんだ!」
慎の成績は、悪い方ではない。
ただ算数だけは苦手で、今回も分数の掛け算と割り算で四苦八苦しているのだ。
それを知った上で、父はうなずいた。
「いいだろう。100点だぞ。99点でもダメだからな!」
「男と男の約束だよ!」
ひとまずは話が付き、きなこは保留という形で慎の家で保護された。
「可愛いわねぇ~」
母だけが、のんびりと構えていた。
ともだちにシェアしよう!