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第三章・5
「100点。絶対100点取るんだ!」
その晩、慎はほとんど寝ずに勉強した。
こんなに勉強したのは、生まれて初めてだ。
夏でも、明け方は冷え込むのだということを、初めて知った。
慎は、白んできた室内をそうっと抜けると、玄関の段ボール箱を覗いた。
中には、きなこが古布にくるまって眠っている。
「きなこ。俺、絶対100点取るからな」
やるだけのことは、やった。
後は……。
「神様、どうか勉強した問題と同じテストが出ますように!」
手を合わせ、瞼をぎゅうと瞑った。
(そういえば亮太、風邪は治ったかなぁ)
学校で、きなこのことを報告しなきゃ。
そして、晶さんのことも。
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