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第四章・9
火花の散るような絶頂を迎えた慎と亮太が見たものは、あの懐かしい原っぱだった。
一面のシロツメクサ、沼のメダカ、枝ぶりのいいホルトノキ、岩場のエンマコオロギ。
そして、青い屋根と白い壁の小さな家に住む、優しい晶さん……。
彼の笑顔が、二人の脳裏をよぎった。
「は!」
「見た?」
「見た、晶さん」
「晶さん、ずっと僕たちのこと見ててくれたのかな……」
「え。それはちょっと、恥ずかしい」
「もう! そういう意味じゃなくって!」
それでもいいか、と慎は亮太を抱きしめた。
亮太も、慎に頬ずりした。
愛しい人と、吐息を混ぜ合わせた。
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