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第5話  夢か幻か・・・

奏耶は夢を見ていた。 それが夢なのかは曖昧だった。 妙にリアルだった。 奏耶はオヤシロ様の祠があるいつものお気に入りの場所にいた。 だが、いつもと様子が違う。 祠の周りに透き通るほど綺麗な水がある。 自分の足下にも綺麗な水があった。 「ここって・・・オヤシロ様の場所・・・だ。でもなんで・・・」 だが、奏耶はいつもと違う感覚があった。 奏耶は自分の手を見ると透き通っていた。 だが良く見ているとだんだん実体化してくる。 そして、自分の姿が水面に映る。 髪の色はほぼ白いし、腰辺りまでの長さ。 それに、酷く汚れてはいるが白い着物?を着ている。 顔は確かに奏耶の顔だがどうも違う。 自分の頭の中がスッキリしてくると身体中に痛みを感じ始めた。 「・・・なんだ・・・これ・・・痛っ」 蹲み込んだ途端、奏耶の周りを風が包み込む。 「うわっ!!!」 風が吹くと体が浮いた。 途端に祠の方へと飛ばされた。 それは、一瞬の出来事だった。 目を閉じていたが、ふわりと誰かに抱き抱えられた。 低く優しい声は何処かで聞き覚えのある声だった。 「おやおや、これは珍しいお客人だな。どこぞの村から来たのかな?」 ゆっくりと目を開けると奏耶を抱き抱えていたのは 黒い翼と黒い瞳を持つ美しい男だった。 「あっ・・・あ〜・・・」 なぜか声が出ない。 「ん?お前は・・・」 そう聞き返すと、男は何やら呪文のような言葉を唱える。 奏耶の額に自分の額を当ててきた。 ・・・・かっ、顔がちかっ!!・・・そう感じた途端、 体の痛みが消え身体が軽く感じた。 「これで、良いかな?」 「うぁ・・・」 大丈夫!と言いたかったが言葉が出ない。 男はわかったような口調で 「で?お前は何者だ?こんな場所に一人でしかもこんな格好で」 「・・・あ・・は・・・?」 「まぁ、俺が名乗る前にまずはお前だな」 「・・・お・・れは・・・あっ・・うぁ・・・」 奏耶だ!と言いたいのに言葉が出ない。 「お前・・・言葉が上手く話せないのか?」 そう聞かれると、奏耶は違う!と言いたくて首をブンブン横にふる。 男は大笑いした。 「そうか、そうか、気持ちは話す気満々だよな。だが、心と体が合っていない。だからお前が話したいのに話せないんだな?ならばここで治して行くと良い。どうだ?」 なんだか訳が分からないが今のこの状況を改めて考えただ肯いた。 「おし、じゃぁ、まずはその汚れた身体と着物を綺麗にしてみようか」 そういうと奏耶を抱えたまま飛んでいき小さな祠の上で霧のようなものに包まれた。 ゆっくりと目を開けると奏耶の目の前に大きな屋敷があった。 周りを見ても見渡す限り、透き通った水しか無い。 そこは、水に浮かんだ屋敷だっだ。 奏耶を抱き抱えたまま、 「ようこそ、我が屋敷へ・・・さぁ、奥の部屋で湯浴みできるぞ」 そう言うと、その男は嬉しそうに奏耶を抱えたまま、サクサクと進む。 「そして、俺も一緒に入ろう!」 何も言わずただ抱えられていた奏耶だが男の言った一言で慌てる。 「ん?・・・うぁ〜〜〜〜〜!!!」 心の中でオレは一人で入れるから!!!と暴れてみた。 だが、叫んで暴れてもびくともしない。 疲れてしまった奏耶は諦めて素直に抱えられたまま 目的のその部屋につれていかれた。 そこは広い風呂場だった。 奏耶がしばらく呆然としていると、その男はあっという間に 奏耶の着物を脱がせる。 男もいつの間にか裸になっていた。 翼も消えていた。 男は奏耶を離そうとしない。 「お前、本当に白いな。髪も肌も・・・」 奏耶は恥ずかしくで俯いてしまう。 「おっ?恥ずかしいのか?愛い奴だな」 奏耶の体なのに言うことをきかない。 そのまま、湯船に浸かる。 暖かかった。 肌にさらりとまとわりつく湯が気持ちよかった。 だが、流石に、この歳?で抱っこされながら湯に浸かる!と言うのは恥ずかしく、まともに顔を上げる事が出来ない。モタモタしていたら撫でるように男が奏耶に触れてくる。 身体に触る大きな手が熱い。 「・・・あっ・・・」 まるで自分の声ではないよな甘い声が漏れる。 「可愛い声だ」 嬉しそうに答える男の手がそっと顎に触れる。 奏耶は驚き顔を上げる。と、妖艶な微笑みを浮かべながら男が奏耶の唇に軽く触れる。 生まれて初めてのキス・・・驚いたが嫌ではない。むしろ、凄く気持ちがいいのだ。 自分の意思とは裏腹に自然と奏耶は男の首に手を回すと、満足そうなその男は 奏耶の唇を塞ぐ。 男の熱い舌が絡むように奏耶の口の中で歯列をなぞる。 「・・・んっ・・・」 苦しくなり離れようとしても、離してくれず吸い付くように奏耶の中に入ってくる。 蕩けるような感覚の中で大きな手が奏耶の身体を撫でるように触れてくる。 奏耶の体の中が熱くなる。ゾクゾクした。 唇が離れると物足りない感じがする奏耶。 感覚についていけず、ぐったりとなる。 耳元でクスッと声が聞こえる。 「さぁ、体も慣れてきたようだ。お前の事を教えてもらおう。ここだとのぼせちまう」 男は奏耶を抱き抱えるとまた何か呟いた。 周りの景色が一瞬で変わる。 そこは布団が敷いてある広い和室。 奏耶はその布団に寝かされる。 ・・・恥ずかしいけど・・ここ気持ちいい・・・ 男が奏耶に覆いかぶさると、再び妖艶な笑みを浮かべながら 「さぁ、お前の事を教えて貰おうか・・・怖くはない。俺に委ねろ」 「・・・うっ、あ・・・」 言葉が上手く出ない奏耶 だが、そんな奏耶の戸惑いとは裏腹に男の手によって翻弄される。 「・・・お前を可愛がってやる・・・そして、俺と馬鍬う事でお前の全ては戻るはずだ。怖がらなくていい。可愛がってやるから安心しろ・・・」 「・・・」 この男・・・すごいカッコいいけど・・・オレ・・・ このままヤられる??ん??・・・ヤバイでも、逃げられない・・・でも、怖くない・・・ 奏耶は言葉が出せないが、そんな事を考えていた。 きっと、このまま彼に抱かれるのだなと・・心地よい温かさに包まれていた。

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