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第8話 記憶と現実と恋心
奏耶の身体の胸から光が溢れ出す。
刻成にしがみ付いていたが
自分の胸から溢れる光で体が浮かぶ様な不思議な感覚に襲われた。
すると
「ほれ、お前の忘れ物だろ?」
そう言うと、刻成の指が奏耶の胸の中に指がゆっくりと刺さる様に入ってくる。
「うっ・・・・わぁ・・・」
気持ち悪いとか、痛いとかそんな感覚は無かった。
刻成の手がすっぽりと奏耶の胸の中に入っている。
すると心臓あたりを掴まれた。
「・・・あった・・・これか?・・・」
「うっあ・・・」
怖くて声堪らない。
「大丈夫だ。痛くないから、ちと、我慢しろよ」
奏耶の胸の中の何かを掴まれパシッ!と音がした。
途端に奏耶の中で何かが弾けた。
身体が仰反る。
いつの間にか刻成の手は奏耶の外に出ている。
仰反る奏耶の身体を支えていた。
思わず・・・
「・・・あっリガと・・・」
片言の言葉が出てくる。
「おっ、出たな?可愛い声してんじゃねぇか?」
そう言われ自分の喉に手をあて、声が出てることに驚いた。
「あっ・・・声・・・」
「ちと、驚かせてすまんな。こうしないとお前の声は取り戻せなかったもんんでな」
まだ喉の奥に何かが詰まっている様な感覚が残っている。
「・・・そうな・・・の・・・?」
「おう、で?今更だが、お前の名は?」
「・・・か・・・な・・・や・・・」
「ほぅ?かなや?と言うのか?」
「う・・・ん・・・」
もっと話したいのに上手く言葉にする事が出来ないでいる奏耶
俯いていると、刻成は壊れ物に触れる様にそっと頬に手を当て、
「おまえの名は、カナヤと言うのか、可愛い名だな・・・なぜ、ここに来た・・・」
「・・・わか・・らない・・・でも・・・違う・・・せか・・・いだと・・おも・・う」
「そか、ではしばらくここにいればいい・・・」
蕩ける様な笑顔で言われた奏耶は何だか安心してしまう。
「ここに来た人間はいつも泣くばかりで知らぬ間に命を絶ってしまう。だが、お前は何だか違うのだ。俺を見ても怖がらぬ。」
寂しそうに言葉えお選びながら話している刻成を見ていると胸が苦しい。
上手く言葉が出てこない奏耶は寂しそうに話している刻成に
「怖く・・・ない。刻成・・・かっこいい・・・優しい・・」
そういってぎこちなくも微笑んでみる奏耶は刻なりを見つめると
まるで子供の様な笑顔で奏耶を抱きしめる。
「お前、もう、ここにずっといればいい!俺はこれでも神様だから心配するこたぁねぇ!」
そう言うと抱きしめられたままブンブンと左右に振られ目が回る奏耶だった。
奏耶は刻成の先程の笑顔が嬉しくて胸の奥がきゅんとなる。
まだ、この世界がどうなのか?一体これからどうなるのかわからないが
不安は先ほどの刻成の笑顔で消えた気がした。
この気持ちがなんなのか、それが恋心だと気づくにはまだ少し時間がかかる奏耶だった。
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