4 / 63

第4話

 翌日は朝早くに目が覚めた。普通の人間ならば朝のこの時間に活動しているんだろうが、三交代生活が長かった俺にとってこういった日常は本当に久しぶりだった。 「ふわぁ……」  まだ慣れない生活だが、今日はハロワに行って仕事探して、それから中沢の所に行く予定になっていた。頭の中で供する事を反芻していると、隣の家の扉が開く音が聞こえた。 「あっ、コウちゃん?」  ん?誰だ……?  スラリと高い身長にサラリとした黒髪。切れ長な瞳は美少年と言うに相応しい容貌だが、こんな知り合いいたっけ?と十年前の記憶を辿ってみる。隣に住んでいるのだから完全にご近所さんだ。それにこの美少年は俺を「コウちゃん」と言った。はて……誰だろうかと思い返した時、一人の少年……たしかあの時はまだ八歳くらいだった気がしたが… 「もしかして伊織か?」 「もしかしたらって……もしかして俺の事忘れてたの?」 「いや……だって俺が伊織見たのって十年前だし……」  たしかこいつは隣に住む滝沢伊織で、よく俺に懐いていたガキだったが……十年会わないとこんな感じに成長するんだな……と昔の面影を若干残しつつも見事に美少年へと変貌を遂げた伊織をまじまじと見た。 「そっか……たしか十年も見てなかったんだよね。ならわからないのも仕方ないよね…」 「悪い悪い!てかでっかくなったなぁ…あれ?俺より高いんじゃないか?」 「やだな…コウちゃんまだおじさんじゃないのに……」 「いやいや、お前から見たらもうおじさんだよ」  本当に十年会わないと人ってこうも変わるんだな……十八歳ってこの歳になって見るとマジで若い。けど俺はそんな干渉とは別にある事に気が付いた。 「その制服……俺の行ってたとこの高校?」 「そうだよ。俺もコウちゃんと同じ学校なんだよ」 「お前ってそんな勉強出来ない奴だったっけ?」 「それ……工業高校生全般に失礼だよ。御生憎と俺は学年一番を一年の時からキープしてる」  工業高校は基本的に科ごとで成績順位が決まる。伊織のいる科は機械科だと言う事だから、その中の一番って事は相当に頭良いんじゃないかと思った。  俺の通ってた工業高校は全部で三つの科があって、その中でも機械科は頭のいいやつが揃う。つまり成績順でいい企業に入れる工業にとって、機械科だと何かと有利だ。  だが俺の記憶の中の伊織は小さい頃から何かしらの習い事をしていたし、頭も良かったはずだと記憶している。おそらく両親は相当反対したんじゃないかとも思ったが、伊織とてやりたい事があって工業に進んだはずだ。

ともだちにシェアしよう!