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第5話

「っと……いけない。そろそろ学校行かないと遅刻する」 「そっか、引き留めて悪かったな。気を付けて行けよ」  ポケットからスマフォを取り出し時間を確認した伊織。  たしかに俺と違って普通の学生もサラリーマンも通勤通学の時間だ。ここで長々と引き留めてもいけないと思い、俺は伊織を送り出した。  すると数歩歩いた所で伊織がクルリと振り返り俺の方を見た。 「あのさ……今日コウちゃんの家に行ってもいい?」 「別に構わないけど……どうかしたか?」 「深い理由とかは特にないんだけど…久しぶりだしさ。ゆっくり話したいって思って……」  十年も会わなかったんだ。積もる話もあるだろうなと思った俺は、「わかった」と言った。  伊織は嬉しそうな顔をして手を振ってそのまま学校に向かった。 「でもご近所さんで十年ぶりって言っても、あの時あいつ八歳だったよな……八歳のガキが俺の事覚えてるのか?まっ、いいか」  いろいろと気になる事はあったが、とりあえず今日の予定を頭で整理する。今日はハロワに行って職を探して、その後は中沢の教師ぶりを冷やかしに行く。そして夜に伊織が来る…… 「菓子かなんか買っておくか」  二十八歳無職。バツイチ男の一日はこうして始まろうとしていたわけだ。

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