10 / 63

第10話

 よかった?どういう事だろう?まぁ歓迎ムードの伊織にツッコむのは止めよう。  それから俺達はこの十年あった事などを話した。とは言っても主に伊織についてだ。小学生の時どんな子供だったかや、中学生の時に告白された時の話など、十代らしい話に俺は耳を傾けていた。  生憎と俺の事については言わなかったが、伊織は聞いてくるわけでもなかったのでとりあえず伊織の話を聞いた。 「わりぃ、ちょっとトイレ」 「うん」  途中退席をしてついでに下に行くと、両親が帰ってきていたので、「伊織ちゃん来てるんでしょ?これ持っていきなさい」と言われ、煮物やら枝豆やら、あきらかに酒のつまみみたいなものを持って二階に上がった。 「これ母さんから」 「わーい!おばさんの作る煮物好きなんだ」 「お前変わってるなぁ…若いんだし肉とかが好きじゃないのか?」 「もちろんだけど、俺こういう家庭的な味って好きだよ。俺の母さん料理苦手だから煮物とか基本出ないし」 「ふーん…」  王子様は食わず嫌いはしない。俺の中の伊織に関する事がまた一つ加わった。そうして再び酒を飲み始めてどれくらい経っただろうか?そろそろ伊織を帰さなくちゃいけない。そう思ったんだが、どうやら俺は寝落ちしてしまったようで途中からの記憶がパタリとなくなっていた。

ともだちにシェアしよう!