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第17話
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翌朝になって、俺は肌寒さを感じて目を覚ました。
季節は春と言っても、まだまだ朝昼の温暖の差は激しい。けど昨日の夜は随分と暖かかった記憶がある。誰かに抱きしめられていたような、ふわりとした爽やかな匂いがしたのも覚えている。
そこまでの記憶が蘇った瞬間、俺はガバッと布団を捲り起き上がった。
「あれ?伊織……?」
そうだった。昨日は伊織が来て、伊織に告白されて、それから同じ布団で寝たのだ。それを思い出すとガラにもなく恥ずかしくなって顔が火照るのを感じた。だが伊織はいなかった。
俺はそのまま下に行き、母親に伊織の事を尋ねた。
「母さん。伊織は?」
「伊織ちゃんなら朝練あるからって帰ったけど。あんたもしかしてずっと寝てたの?」
「あ、あぁ……」
「ホント。方やだらしない生活送ってるのに、伊織ちゃんは毎日部活に学校にって頑張って」
はいはい……どうせ伊織と比べたら天と地ほどの差がありますよっと。
「でも昔みたいに仲がいいみたいでよかったわ」
いや、仲がいい以前に昨日の夜、告られて半分襲われた。なんて事はさすがに言えないが、母親としても昔みたいに伊織と仲良くしているのは嬉しいのだろう。
俺もあれからちょっとだけどいろいろ思い出したし。
伊織は両親の都合でよく俺の家に預けられて、泊まっていたのを思い出した。あの頃はホント可愛い女の子かって思うくらいのガキだったのに、いつの間にか美少年に変貌して、あまつさえ俺を好きだと言った。どんなおもしろネタだよ。きっと中沢辺りが聞いたら「俺の生徒に手を出すな」か、笑われて終わりだろうな。
でも、不思議と伊織とのキスは嫌じゃなかった。まぁ、あれがガチムチの男だったらさすがに全力で拒否なんだろうが。美少年だから許したってか?俺も現金な奴だ。しかもあのままキスしてたら流されてしまっていたかもしれない、と言うのは俺の心にだけ留めておく。
こんな事は流石に伊織にも言えないし……俺は欲求不満なのだろうかとふと考えてしまった。
さて、伊織の本気がどれだけのものかわからないが、さすがにこのままはマズイよな。どうしたもんだか……これでも恋多き男だった俺が、未成年に手を出すわけにもいかないし、いやいや……そもそも男同士だからない!俺は柔らかいおっぱいの方がいい!
一人悶々としながら考えていると、母親が呆れたような声を出してきた。
「さっきから何してるのよ」
「あぁ、ちょっと考え事」
「どうでもいいけど、母さんと父さん。明日から一週間家空けるから後はよろしくね」
「はぁ?」
何を急に言い出すのかと思ったが、どうやら父親の勤続三十周年か何かで、一週間のリフレッシュ休暇を会社からもらったらしい。両親揃ってこの一週間を北海道で過ごすのだとか……
それだけならいい。問題はその後に母親が言った言葉だ。
「それと伊織ちゃんの家、どうやらリフォームするらしいから、一週間程伊織ちゃんをこっちに預けてほしいって、昨日静子さんから言われたの」
静子さんとは伊織の母親だ。
リフォームで一週間こっちに来るって……いろいろと大問題だ!昨日の事が頭で反芻される。これはいろいろとヤバイ気がして仕方ない。
この事、伊織は知ってるのか……?
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