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第18話

 それから丸一日が経過した。今日から伊織が一週間、俺の家に来る事になっている。さすがに一昨日の昨日だったからか、伊織は家にも来なかった。なのであの告白された日以来顔を合わせる事になる。 「おじゃまします!これ、母さんから」  夜八時過ぎ頃、伊織が手に紙袋を持ってやって来た。この近所にあるケーキ屋の袋だ。 「お、おう……勝手に上がって勝手にくつろいでくれ」  なんだか顔をまともに合わせられない。伊織は気にしてないようだが、俺はどうやら意識しまくりみたいだ。女じゃないんだし何を意識してるんだろうな。  ちなみに両親は朝早くに北海道に向かって出て行った。 「なんかごめんね突然。リフォームって言っても、風呂とトイレだけなんだけど、おばさんに使えないと不便だからこっちにおいでって言われて」  トイレと風呂が使えないのは確かに死活問題だな。だがそんな事よりも、一週間の滞在は母親の差し金かと思うと、なんだかイラッとしてしまった。 「ま、まぁ気にするな。こっちも俺一人だし」 「うん知ってる。だからよろしくね」  だからって何だろう?それに俺自身も墓穴を掘ってしまった気がするが、無視無視。気にしないでおこう。 「それより飯は食ったのか?」 「ううん。部活でさっき帰ったからまだだよ」 「そっか……なら外に食べ行くか?」 「えぇ?別にいいよ。コウちゃんに悪いし」 「バーカ気にするなよ」  貯金はそれほどあるわけじゃないが、まだまだ余裕はある。それになるべく二人っきりの空間を作りたくないんだが、伊織は引く気配がない。 「台所借りていいんだったら俺が作るけど」 「いや、それこそ悪い気がするし……だってお前疲れてるだろ?」 「平気だよ。それに母さんとかいない時、自分で晩御飯とか作ってたから」  俺の気など知る由もなく、伊織は俺の分も合わせて晩御飯を作ると言った。  台所に立つ伊織はなんだか新鮮な気がした。 「何かリクエストある?」 「あ、あぁ……冷蔵庫漁って適当でいいぞ」 「わかった」  何をやっても絵になるなと思った。  伊織は冷蔵庫を探り、手際よく料理を作っていく。どうやら冷凍庫に余ったごはんを冷凍したものがあったらしく、それと合わせてハムや卵を取り出した。どうやらチャーハンを作る気だ。俺は伊織が料理する姿を見ながら待つことにした。  数分後。チャーハンが完成し、一緒に作った卵スープも添えられる。程よくパラパラのごはんに絡まったふわふわ卵や、ちょうど辛すぎず薄すぎない味付け。正直美味かった。俺は料理なんて一切出来ないので関心した。 「美味いな」 「ホント?よかった。コウちゃんの口に合って」  ニコニコとほほ笑む伊織につられて俺も口元が緩んだ。 「コウちゃんって料理しないの?一人暮らしとかしてたんでしょ?」 「してたって言っても、基本的に寮だったし、寮の飯食いたくない時はコンビニで買ったり外で食べてたからな。結婚してからも元嫁が作ってたし……」  そう言って俺の食事事情を話してハッとした。あきらかに不機嫌そうな表情をしている。どうやら元嫁の名前を出したからだろう。 「えっと……なんかごめん?」 「どうして疑問形?それに気にしてないから大丈夫だよ」  いやいや気にしてるだろう。だがこれで改めて確信したよ。こいつは本当に俺が好きなんだって。

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