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第19話

「でもコウちゃんが料理出来ないって知ったから、明日からおばさんが帰ってくるまで俺が作るよ」 「俺としては嬉しいけど、大丈夫か?お前部活とかで朝も早いし、夜も遅いんだろ?」 「いいよ!だって俺がコウちゃんにしてあげたいんだし」  あぁ……男ってこういう言葉に弱いよな。伊織が男じゃなくて女だったら感極まって押し倒したかもしれん。けど未成年だからまず無理か……そんな意味不明な格闘をしながら飯を食べ、伊織は片づけまですると言ったので、俺は風呂に入る事にした。  風呂で一人になって心底落ち着いた。落ち着いたで言えば、俺の就職活動もなんとか目星はつけた。後は履歴書書いて面接してと言った具合だ。高圧ガスや危険物。クレーンに溶接と言った資格を持っていてよかったと思う。  もちろん目星をつけた会社は製造業だ。とは言っても前の職とは違うが……  とりあえずこのままスムーズに職も決まって落ち着いて家を出れたら万々歳だ。後は伊織の事だけど……俺の中では正直答えは出ている。もちろんノーなのだが、それを伊織が大人しくイエスと言うわけもないだろうから、どうしたものだろうな。  風呂で悶々と考えていると、ふいにガチャっと扉が開く音がした。 「コウちゃん?」  なんとなく予想はしていたが、まさかのまさかだ。扉の所に伊織が立っていた。しかも裸で。 「ちょ……!お前!」 「いいでしょ?小さい頃は一緒に入ってたし」 「小さい頃の話だろ!今はお互いでかいんだし、こんな風呂じゃ狭いだろ!」  なんったってこんなお決まりな事になっているんだろうな。しかもスポーツをしている現役高校生の身体は逞しい。まだ若干は少年らしい身体着きはしているが、それでも綺麗な逆三角形で筋肉も程よく着いている。もちろんナニも身体のサイズに合った立派なものだ。 「俺もう出るからゆっくりしてろよ」  ここは俺が出た方がいいと思い、立ち上がって風呂を後にしようとしたら、伊織が腕を引き後ろから抱きしめられた。 「逃げないでよ」 「に……逃げてない。それに放せよ」 「嫌だよ。それにコウちゃんずっと俺の事意識してるでしょ?」 「いや、してないし……」  そう言い返したが、若干声が上ずってしまった。それを察した伊織はクスクスと笑った。 「いいから……俺上がるから放せ……っ!」  伊織の腕から逃れようとした瞬間、伊織の手が俺自身を握ってきた。もちろん反応をしてないだらんとなった状態だが、伊織の手つきはふざけ半分で男同士が触ったり握ると言ったものではない。 「おい!伊織!」 「コウちゃんってさ。案外単純だよね?」 「はぁ?……っ!」  何を言い出すかと思ったが、それを聞き返そうとした時には、伊織の手は怪しく上下に動いていた。男にやられて反応なんてするはずない。そう俺の理性と俺の下半身に言い聞かせたが、男とは本当に正直だ。厭らしい手つきに若干反応しかけている。これはやばい!本気でどうにかしないと! 「俺が好きって言って、それからずっと俺の事考えてたんでしょ?バレバレだよ」 「お……前……っ。俺を何歳だと、んっ!思ってるんだ……!」 「歳なんて関係ないでしょ?ねえコウちゃん。ここ反応してきたよ」 「それはお前が……っ!」 「俺が?」  言いかけて止めた、なんだか伊織を前にすると伊織のペースに飲まれてる気がする。二十八のおっさんが情けない。  けど俺の下半身は俺の意志とは関係なく、徐々に形を成していく。本当にこのままではやばい。

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