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第31話

 うぐっっと言葉を詰まらせてしまった。そんな俺の反応を中沢は楽しんでいる。 「ホントお前って誘導尋問とか引っかかりやすいなぁ!頼むから犯罪は犯すなよ!お前すぐボロでそうから」 「その前に犯罪は犯さねーよ」  と言ったものの、未成年に手を出されてる身分だが、社会的に見たら俺が悪者になる。これもこれで立派な犯罪か? 「どうせお前の事だから、グイグイ系女子に押されて困ってるんだろ?」 「な、なんで知ってるんだよ!」 「あ、また引っかかった!」  ゲラゲラ笑う中沢。ホント……どうして中沢といい伊織といい、俺はこうも簡単にペースを乱されるのだろうか?そんな事を考えながらビールを飲んでいると、顔にでも書いてあったのだろうか?その答えを中沢が教えてくれる。 「何で知ってるかって?そりゃお前が今まで付き合ってきた女って大人しい系。悪い言い方すればこっちのいいなりになりやすい女ばっかだろ?だから逆の事には抵抗がない」 「なんか俺の手の内……お前に知られてるな……」 「そりゃ十年を除けば長い付き合いだし、お前の悪行を見てきたからわかるよ」  いい友人なのか悪友なのか、中沢に手の内を知られてるのは癪だが、その分話しやすい。けどこいつに恋心はない。絶対にねぇは……けど伊織は? 「どうした?急に顔赤くして」 「別になんでもない!」  伊織の事を考え瞬間、身体中が発熱したかのように熱くなった。なんだこれ?これじゃまるで俺が伊織を恋愛での意味で好きみたいじゃないか。しかも初恋したての女子みたいに…… 「その気になる子ってそんな可愛いのか?」 「昔は可愛かったな。今は生意気だけど……」 「ふーん……」  ニヤリと中沢が不気味な笑みを浮かべた所で、俺はハッとした。何を口にしてるんだ! 「まぁ確かに滝沢はいい顔してるよな」 「ん?なんでいきなり伊織の名前出るんだ?」 「あれ違うのか?」 「なんでそうなる!」  否定はしてみたものの、どうやら中沢にはお見通しなのだろう。終始ニヤついてる。めっちゃ腹立つ。 「お前さ……男同士とか嫌悪しないのか?」 「別に?だって俺ほぼ男子校の先生だぜ。現に俺の生徒達の中にも妖しい関係の奴いるぞ。俺らが高校生の時にもいたじゃねぇか」  言われてみればそうだ。こんな事で目くじら立てるような教師でもないだろうし、そういう事があってもおかしくない学校にいるんだ。中沢は寛容なタイプだ。 「痴情のもつれで犯罪行為及ばない限り、教師なんて黙認さ。まぁ、お前の場合はどうだろうなぁ……」 「だからどうして伊織なんだよ!」 「バレバレだっつーの……さっきからずっと顔赤いし」 「これは酒が回って……」 「お決まりのセリフなんていらないって。でもそうだなぁ……表に出て問題にならなきゃ俺は何も言わないから安心しろ」 「はぁ……」

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