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第32話
どうやらこいつの中で俺と伊織はそういう関係になってしまったらしい。とんでもない教師だ!まったく……
「んで?どっちが女役?滝沢か?」
「いや……どうやら伊織は俺に入れたいらしいが……」
「マジかよ!なんだよ!散々掘ってきたお前が掘られるのか?」
もういいや。どうせ隠してもバレバレだろうし。
「でもまだ何もねーぞ。てか告白されたけど、俺何も言ってないし」
「へぇ……滝沢にしては大胆だな。知ってるか?あいつって勝手に女寄ってくるから自分からは行かないんだぞ。まぁ、あの顔だし、男からも言い寄られた事はあるみたいだけど」
「お前やたらと詳しいな……」
「だって教師ですから?そういう噂は結構耳に入ってくるぞ」
まったく、俺の教師がこいつでなくてホントによかった。今のガキは可愛そうにな……あられもない噂がこいつの耳に入ってるぞ。
「それで?お前は滝沢に返事しないのか?その様子だと答えは出てるんだろ?」
「あぁ……答えはノーだよ」
「えー!それでいいのか?お前言ってる事と思ってる事が逆だって顔に書いてるし!」
「逆に聞くよ!お前は可愛い生徒がこんなむさいおっさんの手に落ちていいのか?」
「そこは当人同士の事だから。って、そうじゃなくてお前は滝沢の事好きなんだろ?」
「さぁな……けど、恋愛はこりごりだ」
「あー……離婚した原因がそこにあるって事だな?」
詳しく聞いてくる事はないが、中沢も何か悟ってるんだろう。
そうだ。俺は恋愛をするのが嫌になったんだ。したくても出来ない。だから伊織の気持ちには答えられない。そう思ってるんだが……
「お前は自分で思ってる以上に、滝沢に溺れてるんだな」
「……さぁ……」
「素直になれって!滝沢だって馬鹿じゃないんだ。お前のそういうの悟ってるって。だから待ってるんじゃないのか?」
「待ってる?」
「あぁ、お前が素直になって全てさらけ出してくれるのを」
それはどういう意味でだ?好きだからなのか?それとも俺の全てを話せって事か?
そういえばそんな事言ってたな。俺がどうしてこっちに戻って来たかも、俺が言うまで待つって……
「まっ、教師としては忌々しき事だろうけど、友人としてはお前を応援するよ。幸せになりたいなら素直になれよ」
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