40 / 63

第40話

 俺達は恋人同士なんだよな?って聞きかけたがその言葉を飲み込んだ。伊織が何を考えているのかまったくもってわからない。いや、その前から伊織の考えは俺にはわからない。逆に伊織は俺の挙動や反応一つ一つに聡い。全て知ってますという感じだ。なんだかそれもそれで癪な感じがする。 「真面目な話するよ。コウちゃんは本当に俺が好き?」 「そんなの言わなくてもわかるだろ?」 「そうだね。けど、俺としては言ってくれた方がうれしいかな」 「うっ……」  にっこりほほ笑む伊織に何だか問い詰められてる気もする。だがこれは言わないと伊織が引かない。そう思ったので意を決した。 「す、好き……だよ……」  つい最後の方が小声になってしまった。しかも伊織から目を逸らすという、明らかに変な行動。そんな俺に伊織が食いつかないわけがない。 「コウちゃん……?」 「は、恥ずかしいんだよ!」  それは本当だ。だが半分誤魔化すかのような言い方だ。伊織はそんな俺を咎めたりしない。けど、とても答えにくい事を代わりに言ってきた。 「コウちゃんは俺といて幸せ?」 「あ、あぁ……」 「本当?」 「本当だよ!」 「じゃあ、どうしてそんな不安そうな顔してるの?」  一瞬何を言ってるのかと思った。俺はそんな顔をしてたのか?それまで真剣な顔をしていた伊織が悲しそうな表情を浮かべている。 「俺はコウちゃんの全てを知りたい。だからさ、俺はコウちゃんが話してくれるの待ってるんだ」 「何を……?」 「真実を。ここに戻って来た理由。そしてコウちゃんが付き合ったばかりなのに不安に思ってる事全部」  ぎゅっと俺を抱きしめた伊織は、俺の肩に顔を埋めて来た。俺がどうして引っかかってるのか、伊織はちゃんとわかってたんだ。  こいつは……俺の事を理解し、わかってくれようとしてる。俺の事を大切にしようとしてくれてるんだ。そう思うとなんだか嬉しさと安心が込み上げてきた。 「俺は……俺は怖いんだ」 「うん……」 「お前に捨てられるのが……お前はまだ若いし、これから楽しい事もたくさんあるだろ?きっと後悔する。俺の事を好きって言ったのも……」

ともだちにシェアしよう!