45 / 63

いまもこれからも-1

「コウちゃん!こっちこっち!」  満面の笑みを浮かべながら写真をせがむ姿は高校生だなと思った。  俺、矢吹浩二はこの度、晴れて恋人となった隣の家に住む幼馴染、滝沢伊織と一緒に二泊三日の旅行にと、遠方の方へと足を運んだ。  自然豊かな山々に、透明度の高い清らかな水。ここは町中から離れた山間の場所だ。  地元ではすっかり夏モードに突入して暑い日が続いてるが、ここは標高があるからなのか、わりと涼しい。  本当なら恋人になって少しして旅行に行こうとも思ったが、丁度伊織の県予選やら俺の仕事の都合が合わず、延び延びになってしまった。  高校最後の試合だが、伊織はぽんぽんとコマを進めてインハイまで進んだが、インハイの二試合目で負け、そのまま引退したばかりだ。俺としては見に行ってやりたかったが、生憎と新入社員の身で都合よく休みは取れない。  なので結果を聞くだけになってしまったが、伊織は別に構わないと言っていた。俺は見たかったんだけどな。こればかりは仕方ない。  部活も引退し、俺自身も落ち着いたのもあって、ようやくまとまった休みをもらって今に至る。 「どうしたのコウちゃん?早くしなよ!」 「わかってるよ!俺はお前みたいに若くないんだし、もう少し待ってろ!」  どういうわけかこんな山の中をひたすら歩いてる。伊織は平気そうだが、俺には正直しんどい。  一応旅行プランはいろいろと出した。若者が好きそうなテーマパークや都市などを伊織に提示したが、人が多いとこじゃなくて落ち着いたとこがいいと言われ、山間にある温泉宿への宿泊となった。  今日の始発新幹線で上京、乗り換え、それから乗り換えてバスに乗ってと、かなりの移動距離だ。正直辛いのは移動距離や今置かれている状況だけじゃないんだが…… 「コウちゃんもう少し運動した方がいいよ。なんだったら俺と一緒にテニスする?」 「馬鹿!こんなに身体が怠いのはお前のせいだろうが!今日が旅行だからしないって言ったのに盛りやがって!」  そう、昨日は伊織の家に泊まって、それからの移動だったが、若い伊織の精力は尋常じゃなかったって話だ。 「でもコウちゃん嫌そうじゃなかったよ。最後の方とか……」 「もういいからわかったから!それにお前性格変わったよなおい!」 「そんな事ないでしょ?ちゃんと彼氏として、コウちゃんの事を大切にしてると思うけど」  あぁ、そこは否定しないさ。けど付き合ってから箍が外れたかのように会ってはセックスもいかがなものかと思うが。俺も嫌ではないから正面切って文句が言えない。  こんな感じで俺と伊織の交際は順調という事になる。

ともだちにシェアしよう!